─特別警報、特別警報。能力者が街に出現。
能力者の生体反応が見られたっていう場所は、この遊園地ね。
(ザザッ)あの少年です。
遊園地で一人、非リア充してる俺・・・。はぁ・・・。
何だい、この能力者は。いきなり彼の周りが池になったぞ!?
彼はため息を吐くと、周囲に溜め池を出現させる能力者です。
それは能力者じゃなくて、自分の意思に関係なく能力が発動してしまう異能体質者って奴じゃないのかい?
(ザザッ)彼の能力のせいで遊園地がパニックとなってる。とにかく戦刃キルミ、彼にため息を吐かせるな。
ため息を吐かせるな、と言われても・・・。
やるしかないか・・・。
福引で遊園地のペアチケット当たったけど、誘う相手いないし、勿体無いから結局着ちゃったけど・・・。
周りはどこもかしこもカップルだらけ・・・。俺、場違いだよなぁ・・・。
ねえ、キミ一人? 良かったら一緒に回らない?
だ、誰ですか? あなた。
実はさ、友達に約束すっぽかされちゃって、私も一人なんだよね、あはは。
独り者同士、仲良くいきましょうや。
おーっ、何だアレ! すっごい怖そうなジェットコースター!? あれ乗ろうッ?!(ギュッ)
ちょ、ちょっと・・・!?
(最初は何だこの人、強引だなぁ・・・、って思ったけど)
(次第に彼女の魅力に惹かれていって・・・)
(夕暮れ頃には、彼女のことをいつしか好きになっていたのです)
あのさ、今日私と回ってて楽しかった?
・・・はい、とても。
でも何でそんな今にも死にそうな顔してるの?
あのっ、僕今日すっごく楽しくて、キルミさんと会えてホント良かったです。
こういう女性とデート的なことするの初めてて・・・、すごく幸せで今にもキルミさんへの思いが溢れてきそうで・・・。
はぁ・・・。
(あぁっ、ため息が・・・っ! 溜め池が発生する!?)
僕、こんな気持ちになったの生まれて初めてで、僕がこんな事言うとキモいって思われちゃうかも知れませんが・・・。
(なるほど・・・、幸せなため息だと溜め池は発生しないのか)
(ザザッ)よく持ちこたえた、戦刃キルミ。研究機関より対能力者用ワクチンを入手した。バッグに入っているはずだ。
ホントだ、注射器が。でも、いつの間に!?
彼に投与すれば能力は消滅し、彼がこの先、周りに被害を及ぼすことはないだろう。
あの・・・、良かったら僕と付き合ってください!! ・・・なんちゃって、キモいですよね?
あのさ・・・、目閉じてくれない?
キ・・・、キスですか?
はい、目閉じました!
プスッ
う~ん、これが乙女の唇の感触・・・。すっごく痛い、まるで針に刺されたかのよう・・・。
って、注射器?!
(ザザッ)ミッションコンプリートだ。よくやった、戦刃キルミ。
苦労させやがって、わざわざ遊園地に来てまで人様に迷惑かけてんじゃねえよ、非リア充。死ねよ。
まぁお前みたいな奴がいるお陰で、私が食っていけるんだけどな。
ひ、ひどいです・・・。
(ザザッ)戦刃キルミ、お前何をした・・・? 特別警報が発令されたぞ。
日頃の不満を彼にぶつけました。
(ザザッ)彼に新たな能力が生まれた。津波を発生させる能力だ。遊園地に津波が向かってる。
津波だって言われても・・・。
津波だ・・・、つなみだ・・・、涙・・・。私が泣かせたせい?
戦刃キルミ、彼の涙を止めろ。できなければ来月の給料50%カットだ。