土曜の昼頃、俺は生徒会の仕事を終わらせて下校していた。
秋なので企画が多く、休日にも学校に行かなければいけないのは分かるが…休日は家で小説を読んでいたいという思いぐらいは俺にもある。
赤信号になり、少し広めの交差点で待つことになった。食事時なのに俺以外にも割と人はいた。20人ぐらいはいるだろうか。
ここの信号は長いので、その間に今から食べる昼飯は何にするかを考える事にした。
………うむ、甘い物はいい物だ。今日はバニラシュークリームとアップルパイを買って帰ろう。
…ちゃんと栄養を考えろと怒られるだろうか?だが野菜はいらん。特にトマトは駄目だ。トラウマを刺激される。味以前にあの潰れた時の、
トマトだ。
列の先頭にいた高校生があり得ない勢いで突っ込んで来たトラックの下敷きになる。頭の潰れ方といい、液体の跳ね方といい、それを連想させた。
だが音は全く違った。ごきゅっ、という折る、押し潰す、砕く。そんなイメージが付く音が列の一番後ろにいた俺にもきこえてきた。
トラックは高校生を轢いたことによりバランスを崩しいきおいを殺さず横転をくり返しころがってくるこっちにむかってくる。
にげようとしても迫るいきおいが速くにげられずツブサレて灰色のどうろトラックが赤色赤信号とまれとまれとまれとまれとまれとまとまれとまれと
そして、俺が最後に考えたのは
「やっぱりトマトは嫌いだ」だった。
………………………………
……から…………トワ………逃げる……
「……っぐ!!」
??「っ!トワ!!大丈夫か!?」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!」
??「うぁっ!落ち着け!掠っただけだ!腹に穴なんて空いてねぇよ!!」
「落ち着いてなんて要られるか!!俺は潰されたんだぞ!」
??「…はぁ?俺?何言ってんだ?潰されてもいねぇよ。それより……」
??「立て。やられる前に殺るぞ。」
「イヤお前こそ何言ってんだよ!?ていうかダレ───」
俺は直ぐにでも動けるように体勢を立て直した。さっきみたいな事が起こるような気がしたからだ。
腐臭。殺気。摩擦音。金属音。この時点で既に不快なのに、視界には二足歩行をしている豚がうつった。
但し、二足歩行しているだけではない。胴体には筋肉が付き、手足は人間程ある。というより、首から下がまるっきり人間である。
そんな有り得ない生物は鎧を身に纏い、ファンタジーでは定番の鉄の剣(予想)を引きずりながら持っていた。
オーク。頭の中にこれが思い浮かんだ。
………竹刀が無いな。いや、竹刀では勝てないか。じゃあ形が似てるのは………
鉄パイプを発見した。さっき吹き飛ばされたやつか?これならいける。
鉄パイプを拾った瞬間、オークが剣を振りかぶりつつこちら側へ向かってきた。
さっきの青年が持っていた板───盾であろう物で剣を受け止める。響く音でオークの腕力がどれぐらい強いのかが分かる。
その隙に、俺は行動した。
「ハアアアアアアアァァァァアアアア!!」
「カアテエエエエエェェェエッ!!!!」
まず小手で相手の剣を落とし、無力化出来ないかと全力で振りかぶった。
オークの右手首に炸裂した。剣を落とすという目的は成功したが、鉄の塊を軽々と降る左手をコチラに近付けてきたので───
「メ゛エ゛エ゛エ゛エエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェンッッッ!!!!!!!!!!!!」
───ついついその気持ち悪い豚ヅラを叩き潰してしまったじゃないか。(ニヤリ
……………………………………
??「───ふうぅーっ、どうやら追い掛けてはこないようだな。」
「……で、どういう事か説明してもらおうか。」
??「ってさっきから何言ってんだよトワ。口調もおかしいし、あいつとの戦い方といい、頭打ったか?」
「おかしいのはテメェの方だ!あのオークもそうだ!それに俺はトワなんて名前じゃねぇ!俺の名前は凛華(リンカ)だ!」
??「……は?………お前、起きる前に何が起きた?」
凛華「何って………そりゃあ───」
トマト。真っ赤なトマト。潰れた×××。なかみ。おれ。
??「───起きろおおォォォォォ!!⊂三(´Д`;)スパァン」
凛華「ほバァッ!!( ゚Д゚(⊂三」
??「あ、やり過ぎた。おーい。平気か?」
凛華「_(#3 」∠)_」
??「顔面入ったか……暫く起きねぇな(´・ω・`)」
??「……おぶって行くか。」
…………………………………
……お兄ちゃん、また私の分のケーキ食べたの?
凛華「イヤあれは生クリームが溢れて妹さんには食べさせられないなという俺の思いやり精神で悪いのは決して俺ではなく生クリー」
いいよ。その代わり、お兄ちゃんの大事にとってるワッフル食べるもん。
凛華「なっ!俺の十勝牛乳使用クリーミーワッフルを食べる気なのか!?」
ていうか、もう食べちゃったよw(`・ω・´)
凛華「…………十勝……………俺のワッフル…………十勝牛乳使用のクリーミーを……………!」
凛華「俺の十勝をかえせエエエエエエェェェェェェエエエエエエ!!」
??「うおおォォォォォ!?」
??「ハイ、わっふる。」
凛華「はぐはぐハグハグ( ´ ω ` )」
??「お、食べた(・ω・`)」
??「たんとお食べ(*´∀`)ノ」
凛華「はぐは………おいちょっと待てや( ゚Д゚)」
2人「………?」
凛華「いい加減にしろやコノヤロウ。ポンポン重要な事すっとばして話を進めるなボケェ。」
凛華「今から聞きたい事をまとめる。」
凛華「まず、何で俺は生きているか。俺はトラックに、っ、潰された筈だ。」
凛華「次、ここはどこか。……見る限り、俺の住んでいる地域とは違うみたいだ。」
凛華「次、あの化け物は何か。……アレは別に叩き潰しても良かったのか?(´・ω・`)」
凛華「最後に、お前らは誰か。トワと聞いたが、似ているような名前も聞いたことがない。残念だが人違いだ。俺の名前は凛華だ。」
凛華「まだ全て質問したわけじゃないけど、全部じゃなくてもいいから教えてくれ。」
少しテンパっている。そのせいで言葉遣いやら聞きたい事がまとまっていない。
??「で、専門家。これはあれですかい?」
??「専門家じゃない。少しかじってるだけ。そうみたいだけど……この子は少し特殊。いれきゅらー。」
??「……イレギュラーだろ。使ったことない言葉を使うから……」
??「………Σ(゚д゚ )」
凛花「あんたらが仲いいのはわかったからはよ教えろやホゲェ」
??「んーじゃまず、信じられない話だと思うけど聞いて?」
??「知らないのは当たり前。だって貴方の世界とは違うから。」
凛華「それは予想していた。小説をよく読むからな……ということは、俺は自分の世界からこの世界へ転生されたという事か?」
??「少し惜しいな。60点」
??「黙れ糞が。テメーの飯だけハバネロにすんぞ。」
??「…………………………………」
この2人の性格や(上下)関係が分かってきた。青年は調子に乗りやすいヘタレ。少女は……うん。分析終了。
??「……話がそれた。もっと真面目な話をする。」
??「此処は死にかけ、もしくは死んだ人間が通過する世界、死後のちょっと前の世界と考えた方が簡単だわ。」
凛華「……ということは、俺はやっぱり死んでいるという事か?」
??「その質問の前に、ココでくえしちょん、貴方は自分の世界に還りたいですか?」
凛華「(イロイロ突っ込みたいが、突っ込まない事にしよう)帰りたいに決まってる。」
??「なら大丈夫。この世界に来た人達は、向こうで生きていたら帰りたいと願い、」
??「死んでいる場合、この世界に留まりたいと願うんだ。」
??「何故かは解明されてないけどね。」
凛華「……そうか、この世界に来たばかりだからまだ【どの地域】かは聞かなくてもいいな。どうせ知らんし。」
??「次にあのオーク、あれは叩き潰して正解よ。もぐら叩きの様に、見つけた瞬間に仕留めればなお良し。」
凛華「許されてる行為か……理由は?」
??「無限に増える。人間が害になる行動しかしない。無視すると増え続けて邪魔。挙げるとキリがない。」
??「消さないと増え続けて世界が潰れる。」
凛華「なんだよそのバイ〇イン……じゃあ最後に、お前達は誰だ?」
リオ「私はリオ。トワの友達ポジよ。」
サクマ「俺はサクマ。俺も友達ポジだ。」
リオ「そしてもう一人、あなたがトワ。」
凜華「だから俺は凜華だって言ってるだろ?たぶん人違いだって」
リオ「いいからそこの鏡を見て。」
睨まれてしまったので俺は渋々と鏡を覗きこんだ。そこには───
凜華「」
凜華「はっ?」
名前にふさわしい性別になっていた俺がいた。
終わり