ピンポーン。
・・・はい。ゴホッ。
・・・なに風邪でダウンしてんだよ、メガネ。
・・・鳥見?
見舞いのつもりかい? 何か照れるなぁ。
でもまだ文化祭が終わるには早いよね。どうしたんだ?
抜けてきてやったよ。だって、つまんねーもん。
そんな訳ないだろ! だって君と私が徹夜で頑張って準備したんだぞ! 楽しいものに仕上がってるに決まってる!
そーだな。少なくとも他の奴らは、こんな楽しい文化祭は初めてだと喜んでいたよ。
あいつら、途中で実行委員の仕事抜けて済まなかった、って言ってたぜ。
そ・・・、そうか。良かった。いや、むしろそうなるだろうとわかっていたけどね。
でも俺は楽しめなかった。
どうしてだ? 君は今日彼女と一緒に文化祭回ったんだろう? なおさら楽しめたはずだろう? 彼女はどうしたんだ?
アイツとなら別れたよ。
は?! 何で?
俺とメガネがやたら仲が良いねって勘違いして嫉妬してケンカになって、それで破局。
わ、私のせいか?
ま、そういうことになるな。
ごめん・・・。私、君に楽しい学園生活を送って欲しかったのに、私のせいで・・・。
そうだ、全部メガネのせいだ。
許してもらえないと思うけど、本当にゴメン・・・。私は君になんて詫びたら・・・。
そうだな、メガネは責任とって俺と付き合え。
・・・え?
だーかーら、俺の彼女になれってこと!
・・・何で?
俺が今日楽しめなかったのは、メガネがいなかったからだ。
いいや、楽しめなかったのは何も今日だけじゃない。
メガネが俺につきまとわなくなってから、学園生活がつまんなくなったんだよな。
どういう意味?
勉強はできるのに、こういうのには疎いのかよ。
俺はずっと前からお前のことが好きだったんだよ!
はっ、はぁっ?! 何で? いつ? どのタイミングで?!
この気持ちに気づいたのは多分、お前が俺につきまとわなくなってからだけど、
厳密にはお前がつきまとい始めた頃からだと思う。
いつも一人だった俺に、初めて構ってくれたのがメガネだよな。
あの頃は、ただのうっせーお節介やろうだなーって思ってたんだけど、
次第に、メガネといる時間が楽しくなってきて、それが当たり前のようになってきたんだ。
お前は蝿じゃなくて、実は幸せを運んでくれる妖精だったんだな。
私が・・・、妖精? 冗談はやめr・・・ごほっ、ごほっ!
辛そうだな。何かできることはないか?
心配ない。今は家にいるのは私一人だけど、やれることは全部やったから・・・。
鳥見も私の風邪がうつったらマズいから、早く帰ってくれ。
おいおい、俺はお前の風邪をうつされに、ここに来たんだぜ? そんなの承知の上だ。
バカじゃないのか、君は!?
だーめだ、うつる気がしねえ。もっと近くに行った方がいいのかな?
わわ、ベッドに上がってくるんじゃない!
こうした方がいい? (ギュッ)
暑苦しいっ! やめろ! 離せっ!
離してよぉ・・・。
何なんだよぉ・・・。付きまとうなって言ったり、急にこんなことしたり・・・。何がしたいんだよぉ、君は。
皆が幸せになってくれれば、自分は一人ぼっちでいい、とか言ってたな。
お前はその・・・、もうたくさんの人に幸せを与えた。もうそれでいいんじゃね?
今度は俺がお前を幸せにしたいんだ。これは使命とか義理返しとかそんなんじゃなく、ただ俺がやりたいんだ。
楽しい学園生活をお前にも送ってほしいんだよ。
私なんかがそんなの・・・、いいのかな? 生意気だとか言われないかな?
他の誰かがそれを許さなかったら女でもぶっ飛ばす。俺が許させる。
そうか・・・、なら君に全てを任せることにしよう・・・(ボソッ)
え? 何だって?
何でもない!
お前、身体熱いぞ。
君がひっついてるからだ!
気持ちはわかったから離してよぉ!
あんなことがあった後に、鳥見と顔を合わせるのはなんだか気恥ずかしいな。
おはよ~、メガネ。
おはよ・・・って、何かだるそうだな。私の風邪がうつったのか?
違うわい。まさかメガネの口からあんな台詞が発せられるとは思ってもみなくて・・・。
あんな台詞?
ごにょごにょごにょ・・・
かああああっ///
いくら熱で浮かされていたからって、女子があんなこと言ったら誤解しちまうぜ。
忘れろ! 今すぐに!
やだね~。忘れてやんねえ。あっ、皆に言いふらしてやろうかな~?
これが君の言う楽しい学園生活か! 昨日言ってたことは全部嘘なのか? 弱ってた私をからかってただけなのか?
ばーか、まだまだこれからだよ。楽しみにしときな! 妖精さん?
あっ、待てっ! 鳥見!
私を幸せにするまで、しつこく付きまとうからな!
おわり。