からんころん♪
いらっしゃっせ~。
あー、もうお腹ぺこぺこだよぉ~
あいにく店内混み合っておりまして、相席でもよろしいでしょうか?
よろしいですよ
それでは、奥のテーブルへどうぞ。
(1つのテーブルに見知らぬ人たちが4人相まみえる)
ご注文はいかがなされますか?
えっと、じゃぁ、この数量限定特製わがままランチを。
かしこまりました。
・・・・・・。
いくら同じ女性とはいえ、知らない人同士だと、気まずいなあ。
でも、これも何かの縁だし、ちょっとくらい世間話に花でも咲かせてもいいよね?
まずは、正面のこの子に挨拶だ!
え、え~と、混んでますね~。
・・・・・・。
無視されちゃった・・・。
というか、スマホの画面に夢中で、私が声を掛けたことに気付いてないみたい。
気を取り直して、隣のOLさんに話をしてみよう。
わたし、ここ初めてなんですけど、いい雰囲気のお店ですね。
・・・・・・。
ええーっ、なんか不機嫌な表情してるんですけどぉ!?
・・・注文聞いてからもう何分経ってると思ってやがんだ・・・!
こちとら忙しい身・・・1分1秒も時間を無駄にできないっていうのに!
あぁ、料理が来ないからイラついてるんだ・・・。
料理が来るまでそっとしておこう。
ならば、はす向かいに座る、いかにも気の良さそうな女性にアタックだ!
こ、こんにちは・・・。
はい、こんにちは。
やったーーっ、初めてまともな受け答えされたー!
あなた、学生さんかしら?
はい。そこの大学に通ってる者です。
そうなの。実は、私もあの大学を出てるのよ。
ってことは、先輩さんですか!
もう6年も前のことだけどね。小清水教授はお元気かしら?
元気ありまくりですよ。こないだも、早朝寒い中、半裸で乾布摩擦ですよ。
ふふ、相変わらずね。
この人となら、料理を待つ間も楽しく過ごせそう。
お待たせ致しました。特製わがままランチでございます。
あ、もうきた。早いね。
あ、すみません。それ私です。
あ、そっか。この人も先に同じの頼んでたんだ。
やっと来たかー。待ちくたびれたぞー。
ったく、遅いんだよ!あたしは急いでるってのに!
おや?
あれ?この料理って、私の注文のだよね?
は?なに言ってんの?あたしが頼んだのに決まってんじゃん。
どうゆうこと?みんな同じ料理を頼んでいたって訳?
失礼しました。他のお料理もすぐお持ちいたします。
後で来るみたいよ。それなら、先に私にそれ、よこしてくれないかな?
私、ホントに時間がなくてさ。
まぁ、別にいいけど。
お先にどうぞ。
すまない。恩に着る。
よかった。一瞬険悪なムードになりそうだったけど、なんとか収まったみたい。
あの~、お客様。 その、申し上げにくいのですが。
今お出しした料理で、本日の特製ランチは終了致しまして・・・。
ええっ、食べれないの!?
申し訳ございません。
しょうがないかぁ。残念だけど、別のお料理を頼もう。
ずいっ(自分の元へトレーを寄せる音)
なにしやがんだ!
いや、やっぱりこれ、私がいただくわ。
はぁ!?さっき譲ってくれたじゃねーか。
というか、私、あなたより先にこの料理注文してたの。
先に注文した人が食べられるのが筋ってもんでしょ?
ふざけんな!あんた今さっき、所有権を放棄しただろう!
譲った覚えはさらさらないんですけど~?
とにかく、これはあたしのだ!
やめてよ。他の頼めばいいじゃない!
次の注文待ってる時間はない。だったら、今ここにあるこれを食べるっての。
わわわ・・・どうしよ!2人が料理を巡って争ってるよぅ!誰かが、諌めなくちゃ・・・!
まぁまぁ、おふたりさん。冷静になりなさいよ。
よかった。先輩なら、この場をなんとかしてくれるに違いない。
いいですか?時間がないのは誰も同じこと。お昼休憩は限られてるのですから。
それに、あなた。一番先に注文したのは、私なんですからね。
あなた達2人が、私が座ってたテーブルに合席してきたんですから。
すなわち、それを頂くのは、当然私ということになります。
あれ~~?先輩、2人を止めに入ったんじゃないんですか!?
先輩も入って、余計にこじれちゃってるよぅ!
あれ?あんた、いつからいたの?
存在感無さ過ぎて、気付かなかったぜ。
ま、まぁ!なんて失礼な!わたしは確かにここにいましたよ!
なら、店員さんに聞きましょう!この料理は、誰のオーダーによるものなのかを!
そうね。はっきりさせようじゃない。
すみませーん
はい、ご用でしょうか。
この料理なんですけど、誰の注文か分かります?
はい、少々お待ち下さい。
お待たせ致しました。
申し訳ございません。この料理のオーダーがどなたからのものかは存じ上げません。
なにそれー、よく思い出してよ。
申し訳ありません。何分、今の時間は混み合っておりまして・・・。
ちなみに、あたしはこの店員に注文を取って貰った。
奇遇ね。私もよ。
嘘おっしゃい。あなた、スマホに夢中で、店員さんの顔なんて憶えてないでしょう。
うっ・・・。で、でも、ほら、雰囲気がこの人っぽかったっていうか。そうよ、オーラ!私、オーラで人を認識できるの。
苦しい言い訳だな。
ホントよ!風水とか占星術とか、ちょっとかじってるんだから!
だったら、言わせてもらうけど、あんただって、時間ない時間ないってさっきから喧しいけれど、
ホントは、テンパり過ぎて、注文すること自体忘れちゃってたんじゃないの?
ばっ・・・!いくらあたしが忙しい身とはいえ、そんな間抜けするわけないだろう!?
見苦しいわよ2人とも。あきらめて店を出るか、さっさと別の料理を頼みなさい。
ってあんた、なにこっそり自分のほうへトレー持っていってんだ!
あなた達2人がいくら言い争いしても、この料理は私のものだから。
おばさん、大人げないわよ!
お、おばっ・・・!?し、失礼ね!私はまだギリギリ20代よ!
・・・・・・。
まさに修羅場だよぅ!居心地悪いよぅ!はやく店を出たいよぅ!
とはいえ、この人が隣に座ってるから、私はここから動くことが出来ない・・・。
料理を食べるまで、テコでも動かないだろうな、この人。
こうなったら、私がみんなを諌めなくちゃ!
ー前半終了ー