“落葉香・人生を学ぶ”

まさかカナヅチで思いっきり指に当てて腫れあがるなんて。

コロコロ~。

ん? サッカーボール?

どこから来たんだろう?

お姉ちゃん、こっち。

え? 誰?

こっち。

ここの病室からだ。

失礼します。

おお、いい部屋。

そのサッカーボール僕の。

あ、そうなんだ。

はいどうぞ。

ありがと。

ところでお名前は?

・・・。

あれ? なんかまずいこと言った?

ううん、ただ知らない人にはあまり名前を教えない方がいいってお父さんやお母さんが言うから。

なるほど。

私は落葉香っていうの!

おバカなんて面白い名前だね。

字がちゃう!

こう書いて落葉香と読むの!

なるほど、わかったよ。

君の名前は?

だから…

こっちは名前教えたんだから知らない人なんていうのはなしだぞ!

それはそっちが勝手に…

男だったらつべこべ言わない!

・・・。

盛歩だよ。

盛歩君ね!

どうしてサッカーボールを転がしたの?

・・・サッカーボールで遊びたかったから。

退院したら遊べばいいじゃん。

無理だよ、僕昔からここに入院してて、友達もいないし…

ならお姉ちゃんが友達第一号?

えっと、

多分。

おおー! それは嬉しい!

でも僕、心臓が昔から弱くて激しい運動は出来ないって医者から言われてて。

う~ん、それは難儀だね。

じゃあさ! 部屋で出来ることならいいんでしょ!

まあね。

おし! お姉さんが一緒に遊んであげよう!

ほんとに!!

明日、楽しみにしててね!

うん!

次の日。

落葉香、今日はどうする?

ゴメン! 行かなきゃいけないところがあるから! じゃね!

あ、おい!

どうしたんだろう?

まあたまには二人で帰るか。

うん。

お、遅くなってごめん!

大丈夫だよ。

さあ、ゲームをしよう!

まけないよー!

10分後。

あう、負けた~。

お姉ちゃん、この格ゲーだけは強いからね!

得意分野かよ!

さあ! どんどんいこうか!

うう。

面会終了時間まで遊ぶ落葉香。

その光景は一週間続いた。

落葉香お姉ちゃん! 今日ね! 医者に最近体の調子がいいって言われたの!

おおー! 退院もまじかだ!

これも遊んでくれるお姉ちゃんのおかげだよ。

こんなことならお安い御用だよ!

あ、あのさ…

はい。

僕、退院したら頑張ってサッカーをやろうと思うんだ!

いい夢じゃないか!

だから…

僕が有名になったら、お姉ちゃんにプロポーズしていい?

ええ!? プロポーズ!?

駄目かな?

・・・。

いいよ。

ほ、本当!?

その代り! ちゃんと有名になるんだぞ!

うん!

次の日。

ポテチは美味しいな~♪

ん? 人だかりができてる。 なんだろう?

盛歩君! 遊びに来た…

よ?

あなた、まさか落葉香さん?

は、はい。

私、盛歩の母親です。

ど、どうも。

あの、盛歩君は?

今朝、息をひきとりました。

・・・。

ええ!?

う、嘘ですよね!? 何かの冗談ですよね!?

嘘ではありません。

そんな! 盛歩君。

盛歩の顔を見てやってください。

・・・。

どうして…

今朝、発作を起こし、治療しようとしたけど無理だったらしい。

そんな!

これ見てください。

手紙?

私宛だ。

落葉香お姉ちゃんへ。

いっつもゲームで負けます。 どうしてそんなに強いの?

トランプ、二人だけだったけど楽しかったよ。

いかさまっぽいことするのはやめてね。

ここ数日、何度も遊びに来てくれてありがとう。

お姉ちゃんに出会わなかったら僕はきっと笑顔にはなれなかったと思います。

だからお姉ちゃんと出会ってよかったと本当に思ってます。

僕がサッカーで有名になったらプロポーズを受けてくれるって言ってくれた時すごく嬉しかったよ。

でも僕はきっと多分もう退院できない。

自分の体だからわかるんだ。

もう長くないと思う。

だから今しか言えないことをこの手紙に残しておきます。

僕は落葉香お姉ちゃんが大好きです。 だから…

大好きな落葉香お姉ちゃん! 今までありがとう!

・・・。

あの子、実は一週間前から容体が悪化し始めてたの。

っ!?

でも医者からは順調だって!?

あの子なりの嘘です。 あなたを心配させまいと我慢してたのでしょう。

そんな!

でもあなたに出会わなかった三日の命だったあの子が一週間以上生きたんですよ!

私はそんなあの子に息をひきとる瞬間、頑張ったねと言ってやりました。

すると笑顔で……バイバイって…落葉香お姉ちゃんに伝えてって……答えて……。

ぐす…ごめんなさい。

も、盛歩君…

・・・。

バイバイ。

その後、落葉香は自分の部屋で泣いた。

次の日。

うわー! 遅刻しちゃう~!

なんで私たちまで走ってんだよ!

しょうがないじゃん、今日は何故かおきれなかったんだから!

お先~!

あ、待て!

ぴゅ~。

ベシ!

いた!

大丈夫か?

いてて~。

ん? サッカーボール?

すみませ~ん! 飛んじゃって!

これでしょ。 はい。

ありがとうございます。

・・・。

やけに大人しいな。 普段なら怒るのに。

サッカーボールなら当分はいいかなと思って。

お取り込み中悪いけど先行くよ。

私も行くー!

だから置いてくな~!

今日も落葉香は絶好調である。

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Posted at 2012/10/14 22:31 Viewed 9 times

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眠くてうつろうつろしながら作った作品どえ~す。   ※盛歩君は副会長ではありません。

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