今日は何の練習するの?
今日は……
駅のアナウンスだ!
駅員さんかー、面白そうだね。
今日は……
駅員さんだ!
ちょっと言葉を変えたって一緒だよ!
はっはっは、じゃあ俺の後に続けよー。
了解です。
えー、間ぉなく、一番線乗り場ぃ下り電車が参りあす。黄色い線の内側ぃ立ってお待ち下さぃ。
えー、間もなく、一番線乗り場に下り電車が参ります。黄色い線の内側に立って……
あー、駄目駄目。もっと何言ってるかわからないようにしなきゃ。
そういうもんなの? まあ、こう寒いと、「間もなく」って言いにくいもんね。
……そう言えば、なんで「黄色い線の内側」なんだろうな。
え? そりゃ、内側だからじゃないの?
いや。実はそうでもない。
向こう側に黄色い線が一列。こちら側に黄色い線が一列。つまり、合わせて二列、黄色い線があることになる。
そうだね。
じゃあ、「黄色い線の内側」って……
線路の上なんじゃないのか?
ええ!? それはちょっと、こじつけじみてるんじゃない?
いや、よく考えてもみろ。黄色い線が二つあって、その内側と指定されてるんだから、普通は線路の上だと思うだろう。
ええ? でもその理屈でいくと、僕たち死んじゃうよね?
だからこそ、民衆は「駅員が我々に死ぬよう命ずるはずがない」と勝手な先入観にとらわれ、黄色い線の外側に立っているんじゃないか?
ていうか、この言葉の意味って「黄色い線と黄色い線の間」じゃなくて「黄色い線と壁の間」なんじゃない?
……………………。
……?
………………そうだな。