この不肖・怪しい影・・・暗躍せずにはいられないッ!
何故なら、世は今、クリスマスムードまっただ中だからッ!
街へ繰り出すぞッ!
なるほど、外はもうすっかり冬景色だな。
でも私は所詮影。寒さなどまるで感じない
オシャレな通りに出てしまった
行く人来る人、皆が下を向いて歩いているせいか、元気がないように思える
なにか最高にホットなものに巡り合えれば・・・
ひとまず、あの女の影に憑依するぞッ!
憑依変態!
はぅつッ!?
ちょ、どうしたの?急に変な声出して。
いや、なんか急に悪寒がして・・・
あ、そういえば知ってる?同じクラスのあの子ってばさぁ・・・
ふふ、成功だ。
あの生き生きとした表情を見てみろ!これも私のおかげさまさまだな。
ならば、どんどん人々を元気にしてやろうではないか!
憑依!
変態ッ!
お?おおっ!?
なんだかしらねーが、この胸の内に昂る熱い想い、誰かと共有したいっ!
まじでっ!?それガチならソースよこせよ!
これはお祭りの予感、ですわっ!今すぐツイートしなくちゃ!
いやー、知らなかったわ。まさかあの子がそんな───
前から思ってたけど、あいつってちょっと調子に乗ってるっていうかさ───
そーそー、他人のこと小馬鹿にしてる感あるよね───
街にどんどん私の分身たちが蔓延していく・・・
それにともなって、人々の表情にどんどん笑みがこぼれ出してきたなぁ。
ただ、知らないうちに私はどんどん着膨れしていって、ちょっと動きにくいんだけれど
陽が暮れてきた
よし、今日はあの子で最後にしよう
憑依!
変態ッ!
えっ・・・!?
うそ・・・なんで、そんな・・・?
タッタッタ・・・
?
ゆーちゃんっ、ご飯よー!はやく降りてきてらっしゃい
スッ・・・
ぐすっ・・・うっ、ううぅ・・・
この子は何故こんなにも悲しそうなのだろう?
これまで私が憑りついてきた人間は、みな笑顔になっていったというのに・・・
・・・まさか、周りの人が私の事、そんな風に思っていたなんて・・・
知らなかったよッ・・・!
・・・・・・。
そうか・・・、私は影は影でも───
私は悟った。この子にだけは、けして憑依してはならなかったと───。
その夜は、身も凍えるような寒さだったという。
しかし、私は所詮影。
寒さなどまるで感じない