幼いころ私は「魔法が使えたらどんなに素敵なんだろう!」と思っていた。
テレビの中の魔法少女たちはきらびやかな魔法を駆使し、仲間たちと楽しそうに毎日を過ごしていた。
きっと私にも魔法が使えたのならば、そんな素敵な生活が送ることができるのだろうと思っていた。
かくして魔法を手に入れた私は、大事なものを失ったことに気がつく。
私の魔法は何でもできる。
学校の宿題を自動でやらせたり、
料理を勝手に作らせたり、
家を掃除させたり、
テレビのリモコンを取りに行かせたり、
買い物に行かせたり。
そうして全てを魔法に任せた結果、
私は全てがつまらなくなった。
以前は文句を言いながらやっていた宿題、
食器を洗ったりするのが面倒臭かった料理、
一年に一度しか使わなかった掃除機、
いつもなくなるテレビのリモコン、
暑い日も寒い日も行かなければならなかった買い物。
他にも色々……沢山……
私が不平不満を言いながらやっていた全てのことが、魔法でできるようになった。
いや……なってしまった。
私はやることがなくなった。
食べて寝て、
起きて食べて、
食べて寝る。
暇な時は一日中遊んだ。
もう勉強にも、家事にも時間は取られない。
やらなければならないことが存在しない。
これが苦痛以外の何物だろうか。
だから私は、
この魔法の力を使って死ぬことにします。
魔法なんて……いらなかった。
……
世の中が便利になればなるほど、
人間の負担する部分は減っていく。
それは一見楽そうで、良いことのように思える。
だが、本当にそうだろうか?
人間が生きている実感を得るのはどんな時か。
私は「無駄」を感じている時だと思う。
「無駄」を感じることができるのが人間。
それが生きている証。
私は……そう思いたい。