ふぅ、今日もこんな遠くへやって来てしまった。運送業も大変だ。
さっさと帰って仕事先からもらったタラバガニとうまい酒でも…
ん? あんなところに人影?
・・・。
どうしました?
見てわからない?
うん?
これでもヒッチハイクしてるんだけど。
いや、突っ立ってるだけにしか見えんのだが。
普通なんてつまらないじゃない。
いやここは普通の行動しないと車止まらないから!
あなたは止まってるじゃない。
え? そりゃ、こんなのところに人がいれば…
全く、私の魅力に目を奪われてしまったのならしょうがないわね。
なにその私は魔性の女的な言い方!?
まあいいわ、ここであったのも何かの縁ね、乗せてくださる?
え? あ、ああ、いいですよ。
ブロロー。
・・・。
(乗せてから10分くらい経ってるのに一言も話さないなんて)
(ち、沈黙が息苦しい。 なにか話さないと!)
え、えっと、どこから来たんですか?
外国よ。
へえ~、ということは外国人ってわけだ。
あなた視力は大丈夫? 眼科には通った方がいいわよ。 私は日本人よ。
なにもそこまで言わなくても。
まあ、私がフランス人形のように可愛く見てたのなら仕方ないわね。許してあげるわ。
また自画自賛した!?
(と、とりあえず! 話を続けよう!)
が、外国のどこから来たのかな?
とても寒い国よ。
へぇ、寒い国か。 ロシアとかシベリアとか?
南極よ。
・・・。
え?
南極よ。
二回も言わなくても聞こえたから! 何で南極なんだよ! 寒いってレベルとうに超えてるよ!
残念なことに白いトラはいなかったわ。
白いからって南極にいるわけじゃないから!
(こ、こいつもダメだ! もっと頭を使って考えろ!)
(そうだ! 行先を聞くの忘れてたな!)
と、ところで! これからどこに行こうとしてたんだい? 彼氏のところとか? 青春だね~。
風に聞いて。
風?
風の吹くまま、気の向くままに私は行動してるの。
つ、つまり行先はないと?
わかってもらえて嬉しいわ。
(今すぐ降ろしたくなってきた)
ブロロー。
正直、人間は強いと思うの。
え? 急に何? 何の話?
人間は強いってこと。
えっと、何が?
この世界でいろんな発展や、文明などを築きあげてきた。
ま、まあそうですね。
だから他の動物より人間は賢く、強いと私は思うの。
そうですか。
でもね、人間には勝てない事象や物事があると思うの。
そ、そうなんですか。
・・・。
だから人間は強くても勝てないことだってあるの。
それが?
・・・。
・・・。
ど、どんなに頑張っても我慢することにはきっと勝てないと思ってるの。
トイレ行きたいなら素直にそう言ってくれよ!
その後、
ここでいいわ。
え? あ、はい。
(よかった~! 解放される!)
ありがとう。
じゃあ俺は帰るので。
最後に一言。
あなたに幸せが訪れますように。
ん? なにそれ?
おまじないよ。 気にしないで。
そ、そうですか。
ではさようなら。
バイバ~イ!!
さて、家に帰ってさっきもらったこのタラバガニと酒で…
ん?
か、カニが消えた!?
ん? 手紙?
ごちそうさまでした。
ぬわ~! あいつ食いやがった~! 泥棒~!!